自分の部屋に帰るのがちょっと楽しくなる工夫を紹介します。
いつもと変わり映えのしない廊下、何カ月も置きっぱなしでとっくに効果が切れているブラックキャップ、郵便受けに養生テープは貼ってあるけどたまに人の気配がするから空室なのか判断できない隣室……。
家に帰る。たったそれだけの当たり前の行為に、なんともいえない澱みを感じるようになった。
ひとり暮らしに慣れるのはあっという間だった。煩わしい家族のいない生活はまさに思い描いていた自由のかたちだったのだ。全てが自分のためだけの自分専用の心地よい空間、それが特別でなくなったのはいつからだろう。帰っても待つものがいない暗く冷たいワンルーム、日々の生活のほんの少し、たったひとつかみの砂のような違和感がたまっていき、いつしか無視することのできない山になった。
この状況を変える方法はないだろうか。
せめてこの部屋が、かつてのように特別な場所になったなら。
特別な場所……。
例えば……楽屋とか……。
あれ?
あっ……!
なんでもない自分の部屋が、まるで楽屋のようになった。しかも個室である。コンビの相方との仲が悪いのかもしれない。紙が一枚貼られているだけで、見飽きたドアがまったく違うものに見えた。それは特別な空間に続く特別な場所なのだ。
小汚い部屋のなかも、まるで控室である。お菓子はもちろんハッピーターン。本来であればペットボトルもそのまま置いてあるのだろうけど、僕ら視聴者が目にする楽屋の姿はドッキリで隠し撮りされたものばかりだ。放送用にラベルを剥がした方がより楽屋らしく見えるである。リアルとリアリティの違いだ。ここは間違いなく楽屋になった。
こんなこともできるんじゃないの?
きゃーーーーーーーーーー!!!!!!!
相葉くーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!
貴族ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!
まっちゃーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!
わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
ひゃーーーーーーーーーー!!!!
おしまい。
能登 たわし
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