デジタル耳栓を買った。これがあれば多少騒々しい場所でも音を気にすることなく過ごせる。喫茶店、電車、人ごみ、飛行場、騒音を感じる場所に行って試してきた。

〇耳栓というかノイズキャンセル機能のばら売り

人間は聞きなれない言葉を警戒する。パンプキンクリームパイは食べ物だとわかるが、エッドベネディクトプレーストだと何を食べさせられるのか不安になる。今考えたやつなのでそんなものはない。

デジタル耳栓と聞くと少し妙な感じがするが、つまりはノイズキャンセル機能である。いいヘッドホンについているやつだ。そのいいヘッドホンの「いいヘッドホン」部分をなくして、ノイズキャンセル機能だけを与えたのがデジタル耳栓だ。

ノイズキャンセル機能のついたヘッドホンは数万円するが、これなら4000円以下で買える。豪華なショートケーキをホールで買うと何千円もするが、生クリームだけなら数百円で手に入るようなものだ。生クリームを舐めるだけでも意外とケーキを食べたい欲求は満たされる。

よくわからない場合はキングジムの商品紹介ページを見てほしい。

 


耳栓と違って人の声やアナウンスは聞こえるのが特徴だ。

 


DIGTAL MiMiーSENの表記がダサくていい。

 

 

〇混雑した喫茶店でのテスト

これからいくつかの場所で実際に効果の程を試してみる。

騒々しい場所で最初に連想したのが混雑した喫茶店、ということでミスタードーナッツに持ち出して検証してみた。ミスタードーナッツはコーヒーのおかわりが無料なのと、持ち帰りのお客さんが多いので、ある程度長めの時間作業していても気にならないので気に入っている。ただチェーン店の宿命としてゆったりと落ち着いた雰囲気とは程遠いのでまさにデジタル耳栓を試すのにうってつけの場所だ。

この日も四十席ほどの店内の八割ほど埋まっていて、そこそこ騒々しい。

 


周囲の音が聞こえにくくなった状態のイメージ画像。

半分くらいはおしゃべりをしているおばちゃん、おばあちゃんのグループで、残りの半分が学校帰りの高校生と資格試験の勉強をしているらしく三十代くらいの女性、サラリーマン風の男性といったところだ。

隣に座った坊主頭の高校生はハーフっぽいくっきりとした顔立ちで、身長も百八十センチはあるように見えた。そんな長身の男が部活帰りにひとりでドーナツを食べているのである。これはまいった。いろいろな人生がある。

さて、肝心の騒音だ。デジタル耳栓は人の声は聞こえるとのことだったので効果があるかは不安だったのだけど、周囲の「ざわざわ」を見事に消してくれた。まったく聞こえなくなるわけじゃないけど、意識しなければ気にならない。

ただ「ざわざわ」の範囲に収まらないひと際大きい声はやっぱりはっきり聞こえてしまう。

 

 

〇うるさいものの代表、電車


銀色の電車はかっこいい。

「マジカルバナナ!」「電車といったらうるさい」「うるさいといったら電車」と千日手になってしまうくらい電車と騒音のイメージは切っても切り離せない。

線路の近くはそれだけで家賃が安くなるらしいので電車が起こす騒音の威力は凄まじいのだ。このデジタル耳栓を使えばそういう物件に住むのも楽になるかも。

ちなみに上の写真で何かよくないものを連想した人は自分が汚れていることをしっかりと自覚して生きてほしい。私は自分で撮っててそう思ったよ。本体の色がピンクじゃなくてよかった。

 


音楽を聴いている人と見分けがつかない。やっていることは真逆なのに。

肝心のアナウンスははっきりと聞こえた。むしろ耳栓を外したときの方が周囲の雑音に紛れて聞き取りにくく感じられたくらいだ。

本来人間には聞き取りたい音とそうでない音を区別する能力があるらしいが、私はそれがかなり弱い。混雑した居酒屋などでは相手の話していることがほぼ聞き取れずに曖昧にうなずくことしかできなくなる。デジタル耳栓でその悩みが解決できるかもしれないと思ったが、話を聞いている最中にイヤホンにしか見えないものを装着したらビール瓶で殴られてしまうので試すことはできない。

 


ピンボケじゃなくてイメージ画像。本当にこれくらい余計な音が聞こえなくなる。

ホームでも効果は十分に発揮されていたけど、一番実感できたのは車内だ。電車といえば「ガタンゴトン」のその「ガタンゴトン」がほぼ聞こえなくなる。今どきは音も小さくなっているらしいがそれでも「ゴー」という低い音はほぼ遮断できた。

鉄道マニア、特に乗り鉄の人につけたら「台無しだ!」と叫ぶだろうか。

 

 

〇お祭りに行くとなぜかいつも少し寂しい気持ちになる

人がたくさんいてにぎやかなところ、クラブか同人誌即売会の会場だ。ひとりの人間は基本的にそのどちらかにしか行けないけれど、私が行けるのは当然後者だ。そして後者も別にそんなに得意ではない。


こういう場所で人にぶつからずに歩ける人にコツを聞きたい。

大盛況の展示ホール、呼び込みの声、話し声、足音、とにかく賑やかだ。テニスコート1.5面分ほどの部屋に百人を超える人間がひしめき合っている。百人というのはてきとうな数字だけど、本当にたくさんいたので百人といっておけば間違いない。百はすごい大きい。

 


この写真を撮っている瞬間だけ少し穏やかな気持ちでいられた。

耳栓のスイッチを入れた瞬間に、ふっと世界が遠くなった。人の話し声や賑やかさよりも会場の空調の音が消えたことに驚いた。それまでまったく意識していなかった音が、消えたことで存在感を増した。

人のたてる音は半減といったところだった。

 


来年の年賀状、面白いの思いつくといいな。

 

 

〇騒音の究極、飛行機


国内線ターミナルに行くはずが、間違って国際線ターミナルで降りてしまった。

デジタル耳栓本体にはノートと鉛筆と飛行機のアイコンが描かれていた。ノートと鉛筆は作業や勉強の象徴で、飛行機は騒音の象徴だ。さきほどうるさいものといえば電車と書いたが飛行機はそれ以上だ。飛行機も電車も乗り物で、基本的に人が移動すると音が鳴る。

飛行機に乗っても音を気にしたことはなかった。しかし言われてみればエンジンの音はけっこうなものだったと思うし、私が乗るのは東京と北海道の一時間半くらいだから気にならなかっただけで、国際線で十時間も乗れば耳につくのかもしれない。

飛行機に乗る予定もないので、展望デッキに向かう。そこからならエンジンの音も聞こえるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 


この日は天気が悪くて、軽く雨が降っていた。風も強くて寒い。

 

 

 

 

羽田空港の国内線にはふたつの展望デッキがある。サイトを調べると風向きによって使われる滑走路が違うらしい。どちらに行けばより離着陸が多く、飛行機の音が聞こえるか知りたかったのだけど、天気予報は「南の風後北の風」結局どちらに行けばいいのかわからなかったので、近い方に行った。

ANAの飛行機がたくさんあった。たくさんということは百機かと思って数えたけど、せいぜい二十機くらいだ。

 


飛行機ではしゃぐ子供。あまり興味がないけどせっかく連れてきたもらったからそんなふりをしているだけかもしれない。自分はそうだった。

 


爆弾のスイッチを入れる瞬間に見えなくもない。相撲シールを貼るテロリスト。

期待通り展望デッキからは飛行機のエンジン音が聞こえた。ちょうど黄色いスターウォーズの機体が移動するところで唸り声をあげている。

これが聞こえなくなったらすごいなと思いながらスイッチを入れた。……消えない。エンジンの音は依然として聞こえている。ボリューム自体は少し小さくなったが、それでも100が80になった程度だ。100gのポテチが80gになっていても意外と気づかない。そのくらいの違いしかない。

機内で聞こえる音なら対応できるのだろうが、むき出しのエンジンに立ち向かうにはあまりに小さすぎた。

 


思わず本体を見てしまう。赤いランプは光っていた。

騒音の王、飛行機には負けてしまったが、デジタル耳栓自体は気に入っている。気を使っているわけではない。今もこの記事を書くときに使っている。余計な音が聞こえなくなるのと、「スイッチを入れる」という動作が相まってかなり集中して作業に取り組むことができた。

性格的に雑音に弱いので、できれば普段の生活でも使いたいのだけど、やはりイヤホンをしていると見られるのが不便だ。急いで髪を伸ばしてパーマをかけて耳元が見えないようにしてしまいたい。

 


せっかく空港に来たのだからそれらしいことを、と「ごまたまご」を買って帰った。


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能登 たわし

能登 たわし

サイト管理人。ローストビーフ丼って見た目ほどおいしくない。