「張り紙するな」という張り紙に肩を並べる存在、「看板募集」の看板を見つけた。

 

看板を募集する看板とはつまりこういうもののことだ。仮に看板募集看板と呼ぶことにする。

たいてい「広告募集」などの文句と連絡先(電話番号)が書かれている。電話をすると、たぶん大きさとか価格とかの相談をして、看板を取り付けてもらえるのだろう。たまにURLや識別番号と思われる番号や会社名が書いてあったりする。

一度目に留まるといくつか見つかったので、設置方法で分類してみた。

1.骨組みが余っているので型

看板を設置する骨組みに「広告募集」の板が取り付けられているものだ。バイパス道路沿いの看板群の隙間や、普通の看板の裏を探すと見つかる。錆びた骨組みに一つだけ取り付けられて哀愁を漂わせていることもある。控えめに最大限目立とうとしている。看板の子供のようなかわいらしさがある。

西日暮里駅

名古屋市内(看板の裏にひっそりとある)

名古屋の中京競馬場近く

(前の写真の裏側にも同じ看板があった)

2.板が余っているので型

元々何かを宣伝していたであろう白塗りの看板に「広告募集」だけ貼り付けたのだろう。板をわざわざ取り外す必要はないという作業効率からこの形なのだろう。したがって看板募集看板の大きさ=設置する看板の大きさである。やはり主要道路の脇などで見られる。次の役目を粛々と待っているような生真面目さがある。

熱田神宮近く

名古屋市内

名古屋市内

3枚目の「貸看板」は以前は病院の看板だったのだが、いつの間にかこうなっていた。なぜ看板を取り下げたのか理由はわからないが、Twitterで知らないうちに旧知のアカウントが消えていたような寂しさを覚えた。

3.壁が余っているので型

建物の外壁に掛けられた板、もしくは壁に直接「広告募集」と描かれている。2.板余り型の派生である。主要道路や線路沿い、駅前などで見られる。目立ちたがり屋である。

新宿駅

鳴海駅(名古屋市内)

名古屋市内

名古屋市内

4枚目は板ですらなく、ビニール(布?)を張っている。あくまでも仮で、すぐにでも看板を設置するのだという心の表れか。

4.屋上が余っているので型

ビルの屋上に、箱型の白塗り看板で募集されている。大型看板と呼ばれるものだ(調べた)。壁の看板と違い、箱型の骨組みがあり、その骨組みの道路に面したところに板が張られている。駅前などの人通りが多く、栄えているところで見られる。駅の中でも、スタイリッシュな雰囲気の駅ではなく、ちょっとごちゃごちゃした駅に多い気がする。東京駅にないけど新宿駅にはある、そんなイメージ。大きいので、見つけるとテンションが上がる。夜はライトアップされていることもあり、確かな存在を感じさせてくれる。

神保町

新宿駅

名古屋市内

京成八幡駅

5.その他

その他、駅の掲示板に「広告募集」の文字があったり、案内板の空きスペースの広告募集をしていることもあった。だいたいは上記4つに分類されるためレアである。一番好きな看板募集看板は駅の避難場所案内の横長スペースの募集だ。ここに広告を出そうとする人はいるんだろうか。でも、この案内板の作りは初めは何か広告が出ていたのだろう。

京成八幡駅

今回は設置方法で分けたが、デザインも広告の設置業者によって違っていておもしろい。この会社は看板の大きさは小さいけど配色で目立とうとしている、社名は書いていないけどこの配色は前に見たことがあるな、など傾向が見えてくる。

また、おそらく看板募集看板が成立する過程としては、
①不必要になった看板を取り外す、または白塗りにする
②広告募集の文字、または板を貼り付ける
の二段階を踏んでいるのだと思う。看板募集看板になり切れていない白塗りの看板や、看板がない錆びて残った骨組みを見ることがある。白塗り看板は街中に多く、錆びた枠はあまり栄えていない町の道路沿いによくある。あと全体的に観光地にはなかった。普通の看板自体は設置されていたので、景観の問題で出してないんだろうか。それとも募集を出す間もなく埋まってしまうんだろうか。

広告がない白い板

看板を設置する骨組みだけ

看板募集看板は、広告看板を募集する看板広告という自己言及的なところがいい。矛盾を感じると同時に、効率的だと思う。広告募集の看板を見たこと自体が広告の効果を証明している。
広告を設置したいという連絡が来てしまったら見れなくなるんだなと思うと、つい写真を撮ってしまう(でも結構長期間そのままだったりする)。


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二住 キョウ

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50代くらいの男性の店員と40代くらいの男性の店員がいる喫茶店、どっちが店主なのか気になる。
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