このインタビュー記事は必ず2回、3回読みたくなる。

 

はじめに

 このインタビュー風記事を読む前にひとつお願いがあります。この記事を読むときはまず流し読みをしてほしいのです。というか、流し読みをして初めて成立する記事なのです。

 忙しいとき、疲れているときは「画像とキャプションしか読んでいない」という状態になることがあると思います。それと同じようにまず画像とキャプションだけを読んでみてください。そして次は本文も含めた記事のすべてを読んでみてください。とはいえ「読むな」と言われるとついつい読んでしまうと思うので、このページでは本文を読めないように加工しています。読み終わった後、次のページで本文と一緒に読んでみてください。

 面倒だと思うかもしれませんが、読み終わる頃には、もう1度読みたいと思っているはずです。

 


「食べ物が人をつくり、人が作品を創造する」
クリエイターインタビュー 井内クラン

 様々な分野で活躍するクリエイターを紹介するクリエイターインタビュー。7回目となる今回は「一流の中の一流」「超えられるものはいない」と評される井内クランさんにお話を伺います。井内さんの独自の考え方や驚きの食生活など、ひとつのことにこだわり抜いた『孤高のクリエイター』のルーツに迫ります。

 

|何より大切なのは具体的なヴィジョンを持つこと

井内クランさん(38)。

 

――よろしくお願いします。まず最初にお聞きしたいのが、井内さんがなぜ「クリエイター」と呼ばれているかなんですが……。

 ああ、それはよく聞かれます(笑) ただ排便するだけで何がクリエイターだ、という。クリエイト、つまり創造するといった意味で「クリエイター」と呼ばれています。ただ排便するだけで何がクリエイトだと思われるかもしれませんが、一般的な排泄行為と我々が行っている排便行為はまったくの別物で、今日はそのあたりも説明していけたらな、と思っています。

――井内さんはご自身でひりだした糞を販売して生計を立てているとのことですが、それはやはり井内さんの糞は我々一般人のものとは違うから価値がつくということなのでしょうか?

 ええ、いくつか要素はあるのですが、まずは食生活ですね。よりよい作品のためには食べるものにこだわるのはマストです。基本的にフルーツ以外のものは口にしません。それだけなら排便(クリエイト)するまえに具体的なヴィジョンを固めるんです。

 

「生み出す前に明確なヴィジョンを持つことが何より大切なんです」

 

このくらいのサイズで、このくらいの形、色のものを生もう! と決めてから排便(クリエイト)に取りかかります。散漫な印象のまま始めても散漫なうんちしかできません。私がなぜ他の排便人(クリエイター)たちと違うかといえば、クライアントの依頼通り、あるいはそれ以上の色艶、味のうんちをひりだせるからこそ、たった100gのうんちに3980円という値段がつくわけです。

――弟子がいるんですね。

 

|食物が人を創り、人が作品を創造する

井内さんが実際に1日に口にする食べ物。

 

――さきほどフルーツしか口にしないとおっしゃいましたが、具体的にはどのような食生活を?

桃娘(トウニャン)という話を知っているでしょうか。これは中国で行われていたとされるある種の伝説なのですが、幼い頃から桃だけを食べさせて育てた女の子のことなんですね。そうして育った娘は身体から桃の匂いがするようになり、排泄物すら桃の香りを纏うようになったといいます。つまり私は現代の桃娘なんです。1日に食べるのはリンゴ1つ、バナナ3本、キウイ1個、グレープフルーツ1個です。日によって多少のばらつきはありますが、平均してこれくらいになるように調整しています。お腹が空いたからといって量を増やすとうんちが緩くなるので。

 

取材は日の当たるオープンカフェにて行われた。

 

――なるほど。ところでさきほどから飲まれているコーヒーはうんちには影響しないのでしょうか?

あっ。いや、そうですね。……すみません。この部分は書かないでいただけますか。

――悪い影響があるということでしょうか?

いえ、その、一杯くらいなら、たいした影響ではないんです。本当です。むしろ少し香ばしい匂いになるので、わざと飲むこともあるくらいです。なので大丈夫なのですが、その、うるさいことを言う輩もいるので、あまりイメージ的にもよくないので。

 

「これからの時代を生き抜くにはイメージ戦略も重要だ」と語る井内さん。

 

 

|たまらなくなって川を歩いたあの日を思い出す

――かなりストイックに取り組んでいらっしゃるようですが、つらいと感じることはないでしょうか?

もちろんありますよ。牛丼が食べたくなってどうしようもなくなったり、クライアントに握手を求めたら断られたり、あとは自分の仕事のことを初めて親に話したときは緊張しましたね。さすがの私も少しお腹が痛くなって、8年ぶりに下痢をしました。

 

「つらいと感じたら、こうして川を歩いて、若かった日のことを思い出すようにしています」

 

だからそんなときは、こうして川を見るようにしています。川を見ると若かった頃のことを思い出せるんですよ。14歳のときです。どうしても自分以外のうんちが食べたくなって、夜中に自転車で河川敷まで走って、誰かの野ぐそがないか探したことがあるんです。あのときの狂おしさに比べたら、食欲なんてたいしたことじゃないって、ちっぽけなことだと再認識できるんです。

冬の寒い日で、パジャマで飛び出したうえに河川敷まで30分くらいあって、今では本当にマネできません。必死に草むらをかき分けて、やっと見つけたと思ったらカチカチに凍っていたときは、嬉しいやら悔しいやらでちょっと泣いてしまいました。どうにか手で暖めて食べたんですが、どうも人のものじゃなくて犬のだったらしくて、そのあと3週間入院することになっちゃって……。

 

後半は河原に場所を移して行われた。この日は暖かく犬のさんぽをしている人の姿もあった。

 

――ちなみにそこに犬がいますけど……。

犬のをいったのはあのときの一度きりですね。今はもう興味ありません。

――失礼しました。

 

「あのときの自分の気持ちだけは、絶対に裏切ってはいけないと思うんです」

 

 

|いつだって新しい道を探している

――最近は食べるだけではなく新しい使い方を提案しているとお聞きしました。

食べる需要はほぼ横ばいで一定なので、それ以外の使い道がないかと模索してるんです。私自身はただ手でこねているだけで楽しいのですが、ほとんどの人はそうではないようなので、なるべく身近なものとして感じてもらえるような提案をしていこうと思っています。

少し前に考えたのは「塗る」ムーブメントで、これは残念ながら失敗に終わりました。肌触りをよくするためになめらかさ重視のうんちを用意して記者会見に臨んだのですが、「汚い」「病気になったらどうするんだ」と怒られました。

――くそ正論ですね。

 

アイディアに煮詰まったときは軽い運動をするのがルーチン。

 

今推しているのは「投げる」ことです。これは動物園に行ったときにひらめきました。やはり人間には根源的な欲求があると思うんです。他のオスよりも強い個体であることをアピールしたい。そういったときに何をするべきか。うんちを投げるべきなんです。より堅いうんちをより遠くに飛ばした者が偉い。これは猿の群れだけでなく人間の集まりでも形を変えて行われていることです。学歴やキャリアなど目に見えないものになっているだけで、本質は同じです。この「投げる」という使用方法は喜ばしいことに仲間たちにも受け入れられつつあります。今では休日に集まって公園でキャッチボールならぬキャッチうんち会を開催するまでになりました。

――全然うまくないです。

 

さらに次の展開も構想中だという。

 

僕たちは便器の中でたゆたううんちではなく、下水道を勢いよく流れるうんちでなければいけないと思うんです。濾過されて別のものに形を変えるかもしれないけど、その先にあるのは大きな海です。そうやって人々の生活に溶け込めたとき、生きる意味が達成できると信じています。

――本日はありがとうございました。

 

テキスト:能登たわし / 撮影協力:逆襲
編集:ひざかけちゃーはん編集部

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