【第二回】上野恩賜公園・動物園


〇失敗した。花見だ。

夜の上野恩賜公園へ行った。恩賜は「おんし」と読むらしい。動物園目当てでよく来るので昼の顔と夜の顔を比べるのにちょうどいいと思っていたのだが、上野駅に降りた途端にそれが間違いだったとわかった。

その日は3月30日。お花見の時期だった。

静まり返った夜の公園を期待していたのだが、危惧した通り公園内はあちこちで宴席が設けられており地獄絵図。労働が終わり趣味の散歩を楽しもうと思った矢先に他人の宴会を眺めることになるのはちょっと悔しい。

〇なるべくひとけのないところへ行こう。

公園の入り口にある滝はライトアップされていて綺麗だった。

缶ビール片手に花見を楽しむ人たち、自撮り棒を使って桜の写真を撮る外国人観光客、その人たちに果物を売り歩く女性、ケータイ片手に待ち合わせの相手を探している様子の女装した人、様々な人間が行動をしていた。

さきほどの滝の写真に写りこんでしまった外国人の男性は、歩きながらビデオ通話をしていたらしく、母親なのか奥さんなのか、寝間着姿の白人の中年女性が画面いっぱいに表示されていた。

人がいなければ桜は綺麗だ。

ちなみに訪れたのは午後10時ごろだ。

個人の集まりではなく、どこかの企業の宴会らしく、机まで持ち込んでかなり本格的だった。私も歩きながらメガホンで何やら挨拶をする役職付きの男性の声を聞かされた。

ゴミは持ち帰りが推奨されているが、公園内の各所に大きなゴミ捨て場が設置されていた。

もちろん撮った。おじさんがゴミをより分けている。

〇なんか

綺麗なレストランもある。

トーテムポール(ライオンズクラブ寄贈)もある。

家康のなんかもある。いろいろあるね。

「桜に触らないでください」

桜に関する注意書きがあるのも、この時期ならでは。

 

〇大好き!動物園

人のいない方を選んで歩いていると、動物園に行きあたった。ここにはライチョウがいるのでたまに見に来る。

もちろん門は閉ざされている。

何か動物の声でも聞こえるかと思って耳をそばだててみたが、何も聞こえなかった。おとなしく寝ているのだろう。ゼルダに夢中で夜更かしをする鹿とかはいないらしい。

正門だ。

動物園の入り口の一番目立つところに、バツ印をつけられた犬が掲げられているのはなんだかおかしい。

かわうそ。

あざらし。

 

〇美術館

隣には美術館もある。当然ながら中には入れないので外観をぼんやりと眺めた。動物園にはよく来るが、美術館には行ったことがない。中には何があるんだろう。絵かな?

ひとけのないところを選んでいるにも関わらず、美術館の近くには人が立っていた。黒いダウンを来た中年の女性だ。

別に何をするわけでもなく周囲を歩き回っている。夜中の美術館を眺めているなんて、ちょっと気味が悪い。しかもなんとなく同じ方向に動くので、私がこの人を追っているようにも、この人が私を追っているようにも思えるような位置にいる。

夜の公園にいるのなんて酔っぱらいかやばいやつなので、なるべくそっとその場を離れた。

近くに自転車が2台とめてあったけど、この人たちもどこから何が目的で来たんだろう。

支えられている木。

 

〇何もないね。

入り口近くにあった水を吐くカエル。私もこうなりたい。

現在は使われていない門。中が動物園なので何か見えないか目を凝らしたが何も見えなかった。暗視スコープって3000円くらいで買えるかしら。

午後十一時には帰らなければいけないらしい。このときだいたい十時半。

廃墟に見えるけど昼間はちゃんと営業していることを私は知っている。

公園の入り口へ戻った。都会の明かり。


おしまい。

住所が「上野公園」なのちょっと面白いね。


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能登 たわし

能登 たわし

ローストビーフ丼って見た目ほどおいしくない。