今週気付いたこと。ハムスターを飼い始めて気付いた話。
午前3時15分ごろらしい。
ハムスターを飼い始めた。名前は『寂寞』。俺の寂しさを全て引き受けてくれるからそう名付けた。エサをあげるときは「せっきー」と呼んでいて、今では名前を呼ぶだけで寄ってくるようになった。
ふと自分がやらなそうなことをやってみようと思い立っち、選んだのがペットを飼うことだったのだ。情操教育のやり直し。ハムスターの寿命は約3年なので、俺が30歳になるまで買い続けられたら天寿をまっとうできたことになる。これまで「ペットなんて飼う気持ちがわからない」と言って憚らなかった俺も30まで、何か得るものがあり変わるかもしれない。
寂寞には静かにたたずんでいる様という意味があるが、うちの寂寞は飼い主に似て落ち着きがない。さっきまで寝ていたと思えばケージなかをあっちにいったりこっちにいったり、床に敷き詰めている木くずをまき散らして動き回っている。
ハムスターは夜行性なので一番元気なのは夜中だ。いつもは別の部屋に置いているのだけど、その日は夜になっても気温が下がらず暑かったのでエアコンのある寝室に置いていた。
回し車の音で目が覚めたのは午前2時頃だった。それまで使っているところを見たことがなかったのだけど、夜中に俺が見ていないときに使っていたようだ。人の視線があるとそっちを意識してしまうみたいで、エサを要求されることもある。
だんだん頭がはっきりしてきて気付いた、聞こえてくる音はハムスターの音だけじゃない。
隣人の声だ。隣に住んでいるのは俺よりも二つか三つほど年下の男性で、顔がいい。
筒抜けというほどではないが大きな声は聞こえてくる。古い木造アパートなのでしかたない。人が死んでいることもあるし。ちなみにこの部屋は今借り手を探しているようなので興味がある人は住んでみてほしい。
誰か遊びに来ているらしく、ずっと笑い声が聞こえてくる。「うふふふふふ」「えへへへへへへ」「あはははははは」
何ヶ月か前に、「おめーいつも偉そうなんだよ!」「死んじまえクソが!」と、俺が怒られてるんじゃないかと勘違いするくらいの声量で女性の怒鳴り声が聞こえてきたことがあったけど、どうもそのときとは違う声の気がする。
そのままなんとなく寝付けないまま1時間以上ぼんやりと横になっていた。驚くべきことに隣の部屋から聞こえてくる笑い声はほとんど途切れることがなかった。俺が起きる前からずっと笑っているのだとしたら、2時間近く笑い続けていることになる。
おいおいおい。大丈夫だよな。これって隣人と友人の声であって、霊的な何かじゃないよな?
と不安になったころ、聞こえてくる声の質が変わった。端的にいえば嬌声が聞こえてきたのである。
ハムスター「カラカラカラカラ」
隣人「あっあっあーあー」
ハムスター「カラカラカラカラ」
隣人「あーあーあーあー」
ハムスター「……………………」
どうやら新しい恋人ができたらしい。
ハムスターを飼わなければ気付かなかった。ありがとうせっきー、夜更かしはしないで早めに寝るよ。

能登 たわし

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