町で見かける道路標識は大きくわけて2種類ある。
支柱がまっすぐなやつと、“くぃ”っと曲がったやつだ。
その“くぃ”っと曲がった道路標識を「標しくぃ」と勝手に呼んで愛でる活動をしている。
みなさんが「いきなりなに言ってるんだコイツは」と思っていることは記事を書く前からすでにお見通しなので、とりあえず写真を見ていただきたい。
左が普通の標識、右が標しくぃである。
おわかりいただけただろうか。
右のように支柱が“くぃ”っと曲がった標識が「標しくぃ」である。
標しくぃのなにがいいのかというと、文字通り“くぃっ”となっているところがいいのである。わかりやすく言えば、かわいいとかセクシーみたいな感情だ。無機物に対するエロチシズム。
今回はそんなめくるめく標しくぃの世界を紹介したいと思う。
■カーブミラーも標しくぃ
カーブミラーも標しくぃ
どうですかこの曲線美。まるで生命が宿っているようだ。
左なんて「ひょっこりはんです」って言われれば、そうにしか見えないだろう。
しれっと出したが、実はカーブミラーも標しくぃの範疇に含まれる。「いやいやカーブミラーは標識じゃねえだろ」とツッコミがきそうだが、標しくぃ界においては私がルールブックだ。邪魔するヤツは指先ひとつでダウンだぞ。
ただ、そういったスタンダードなものばかり見せられてもポカーンとされるだけなので次はすごいのを出しますからね。
■イリュージョン系
柵の間をすり抜けるイリュージョン系
柵の格子の間をすり抜けている。手品だ。サーカスだ。いや、イリュージョンだ!シルク・ドゥ・ソレイユもびっくりなアクロバットである。もはや観光スポットとして、るるぶあたりに掲載されてもおかしくないだろう。
このような標しくぃはほかにも観察されている。
みごとなイリュージョン
一瞬「えっ!?」となるだまし絵的な要素も含んでいる。
柵が先か標しくぃが先か。コロンブスの卵的な疑問が発生するが、ここでは純粋に“わーすごい”と拍手を送ろうではないか。
こういった柵すり抜け案件は総じてイリュージョン系と呼んでいる。
■崖っぷち系
続いてはこちら。
崖っぷちに咲いた一輪の花…じゃなくて標しくぃ
これは崖っぷちに系に分類される。
土俵際いっぱい、崖っぷちでふんばっている勇姿を見れば応援したくなるのが人の常。ブルーハーツばりに「ガンバレー」と叫びたくなる。標しくぃにやさしく。
ガードレールもくぃっとなっている。
こちらも崖っぷち系。
ガードレールをマトリックスのごとくかわしているのが特徴的だ。マトリックス観たことないけど。
よく見るとガードレールの支柱もくぃっとなっているのがかわいい。
イリュージョン系?…否!
手前に柵があるので、これまでの流れだとイリュージョン系かなと思うが、近寄ってみれば崖っぷち系だ。
このギリギリ具合、ノーベル崖っぷちで賞最有力候補である。
■標しくぃのいろいろな楽しみかた
まぁこういった特殊な標しくぃは、当然のことながらそんなにぽんぽん見つからない。
普段は最初に挙げたノーマルな標しくぃを細々と集めているわけだが、シチュエーションによっていろいろな楽しみかたがある。
1枚の写真に2つの標しくぃ
1枚の写真に複数の標しくぃを収める標しくぃチャレンジという遊びもある。
#標しくぃで検索すると過去には4つ5つ収める猛者も出てきている。
ハッシュタグを使ってくれるのはありがたいが、本家を超える勢いなので肩身がせまい。われわれもがんばっていかなアカンなと思とるんですけどね。と、漫才師みたいなセリフが口をつく。
そして標しくぃチャレンジで私がいちばん気に入っているのがこちらだ。
道をはさんで左右に標しくぃ
やや引きの写真だがわかるだろうか。
道路をはさんでカーブミラーの標しくぃが設置されている。
この並び、どこかで見たような…あ、仁王像だ!標しくぃ界の金剛力士像、いわゆる金剛りくぃし像である(これが言いたかった)。
左「阿形です」 右「吽形です」
口がないのでどっちがどっちかわからないが、うっかり宇宙の始まりと終わりをあらわしてしまうこの世界観よ。
■標識の標しくぃ
ここまでさまざまな標しくぃを紹介してきたが、大半がカーブミラーである。
先に「カーブミラーも標しくぃだ」とうたったが、これじゃああまりにも標識の面目が立たないだろう。
ここいらで標識限定の標しくぃコレクションを放出させてほしい。
標識部分も“くぃ”っとなった標しくぃ
九州では90度くぃっとなったものが多い
こうやってみると、いい曲がりっぷりですよね
■レアな右くぃ標しくぃ
ざっと見ていただいたが、続きましてはこちら。
くぃっとなっている方向に注目してください。
いっけん普通っぽいが、支柱が向かって右方向に“くぃ”っとなっていて、実はこれがけっこうレアモノなのである。
本来、標しくぃが曲がっている目的はバスやトラックなど大きい車に接触しないために、だ。
日本の道路は左側通行で、車は右ハンドル。左前方の視界がひらけているので、標識は進行方向の左側に設置されるのが基本仕様となっている。
ゆえに、標しくぃは左くぃが圧倒的に多く、右くぃはイレギュラーな存在だといえるのだ。
余談だが、「ゆえに」と入力したら「∴」と変換されて、苦手だった数学の授業を思い出した。証明問題。
路上観察界隈ではおなじみの右目室外機(ファンが向かって右側についている)がレアなのと同様、標しくぃも右くぃがレアということを覚えて帰ってほしい。
あとイラストも載せておく。余計わかりにくいかもしれないが、せっかく描いたのでみんなLet’s 査収だ。
いるのかどうかわからない図解
ちなみに、右くぃと勘違いしやすい例として以下2点がある。
・カーブミラーに関しては、曲がり角の先をちゃんと写すために前後左右あらゆる方向に曲がる必要があるので、右くぃがめずらしいとかは一切ない。
・一方通行の標識は道路と平行に向いているので、いっけん右くぃかと思って近づいても、実は奥くぃということが多い。
■まとめ
まちなかには数多の観察物がある。
意識しなければなんの変哲もない日常風景だが、少し注意を払うだけでそこには変哲しかない光景が広がっていることに気づく。
ふだんから路上観察している人も、していない人も、路上で標しくぃを見かけたら「なんかの記事に書いてあったなぁ」と思い出してもらえれば幸いである。
欲を言えば写真を撮って Twitterで #標しくぃをつけてつぶやいていただければ、ひょっとこの面をかぶって小躍りしながらリツイートに伺いますのでよろしくお願いします。
ようこそ、めくるめく標しくぃの世界へ!(一方通行)
koge
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